お知らせ

「第27回 日本ヘリコバクター学会学術集会 学会レポート」を掲載しました。 2021.10.06

第27回 日本ヘリコバクター学会学術集会
学会レポート


 内視鏡学や消化器病学の日常診療や研究は年々進歩し、細分化と専門化が年々進んでいますが、ヘリコバクターの分野は細菌学、薬理学、疫学、社会環境学、消化器病学、内視鏡学など様々な専門分野の医療者や研究者が日々切磋琢磨している分野であり、その重要性はますます高まっています。そのような中、第27回日本ヘリコバクター学会学術集会は、厳しい残暑が続く2021年9月24日から26日まで東京医科大学の消化器内視鏡学分野の河合隆主任教授の会長のもと東京医科大学病院の臨床講堂を主会場としてWEB開催で開催されました。(図1)欧州ヘリコバクター研究グループも数年前よりマイクロバイオータの研究グループと合流し、European Helicobacter and Microbiota Study Groupとなり、本学術集会も世界基準に合わせた形での開催を目指し、メインテーマも"ヘリコバクターからマイクロバイオータまで "となりました。また、当初は例年通りの対面式での学術集会の開催も模索しましたが、2020年より続くCOVID-19感染症が猛威を振るう中で学術集会の適切なあり方・開催方式を鑑み、本学術集会初のWEB開催となりました(図2)。本学術集会がWEB開催となったことで演題応募数の減少や参加者の減少も危惧されました。しかし、河合隆会長の会長講演、村上和成新理事長の理事長講演、服部正平先生、Mario Dinis-Ribeiro先生、小和田暁子先生の3つの特別講演、国際シンポジウム、腸内細菌にターゲットを絞ったMeet the expertの7つの主題テーマが企画される中、例年通りの演題応募が集まり、視聴参加登録者も900名を超えるなど、そのような心配はいらない程の盛況の中での学術集会となりました。 本学術集会の目玉の一つは初の試みとして学術集会での共通言語を英語としたことです。演者の先生方には学術集会終了後にオンデマンド配信されることを考慮して英語と日本語の2種類の発表スライドを作成いただくことになってしまいましたが、学術集会当日は不慣れな部分もある中で全セッション内では活発な討論が繰り広げられました。また、本学術集会の最大の企画は、日本ヘリコバクター学会が主催で、日本消化器内視鏡学会とロシア内視鏡学会が後援する形で開催された国際シンポジウムです(図3)。現在、日常臨床の現場で胃癌予防のためにH. pyloriの除菌治療が盛んに行われているにもかかわらず、除菌後胃癌をめぐる問題は山積している状況です。その課題を解決すべく、日本と欧州、東アジアにおける内視鏡診療の現状を討論するため、"Diagnosis of precancerous lesions: Endoscopically or Histologically ?Kyoto classification vs MAPS II "のタイトルのもと、村上和成新理事長と伊藤透先生の司会のもと開催されました。日本からは小野尚子先生、兒玉雅明先生、土肥統先生にご講演をいただき、菅野健太郎先生、服部隆則先生、北野正剛先生の特別発言、欧州内視鏡学会の診療ガイドラインであるMAPS IIを作成したMario Dinis-Ribeiro先生からのコメントもあり、各国でのH. pylori診療の違い、胃癌リスクの考え方の違い、胃癌のサーベイランス方法の違いなどが明確にされ、非常に有意義なシンポジウムとなりました。 本学術集会では消化器内視鏡学分野の医局員も多数報告し、濵田麻梨子先生は"除菌後胃がんの世界を探る : 自己免疫性胃炎関連を含む"の主題セッションで "H. pylori 除菌療法を受けた患者における異時性胃癌に対する化学予防"を、永田尚義先生は"消化管疾患と口腔、胃内、小腸、糞便マイクロバイオームのクロストーク"の主題セッションで"酸分泌抑制薬と腸内微生物叢変化"を、新倉量太先生は同セッションで"H. pylori 除菌後胃癌とFusobacterium、Neisseria属の関連"を、岩田英里先生と髙橋孝慈先生は一般演題で"H. pylori除菌治療の上腹部症状に対する効果と改善に関与する因子の検討"と"胃炎の京都分類における内視鏡所見とディスペプシア症状との関連性"を報告しました。
 私は今回の学術集会で事務局長の重責を担いましたが、当日はシンポジウムの" H. pylori 感染除菌のための対策と課題"の中で"H. pylori 除菌治療後の逆流性食道炎発症のリスク: メタアナリシス"の発表、国際シンポジウム内でのコメンテーターを担当しました。本学術集会の準備は開催1年半前より河合隆主任教授を中心に医局員総出で行い、盛況な学会として終結できるように企画や準備、運営を行ってきました。未だオンデマンド配信が残る状況ではありますが、学術集会が終わった今振り返ると、予定通りに安穏無事に学術集会が盛会の中で終えることができたことで肩の荷が下りた思いがするとともに、医局員の絆がより堅強なものとなったことを考えても非常によい学術集会ではなかったかと思っています(図4-6)。

文責: 杉本光繁

1106_01.jpg 図1 1106_02.jpg 図2

1106_03.jpg 図3 1106_04.jpg 図4

1106_05.jpg 図5 1106_06.jpg 図6

お知らせ

ページ上部へ戻る