診療案内はこちら ⇒ 東京医科大学病院 心臓血管外科 ホームページ
- トップ
- ›
- トピックス
- ›
- 血管内治療
動脈硬化による血管の病気で、「下肢閉塞性動脈硬化症」という病気があります。あまり知られていない病気ですが、非常に多い病気です。足の付け根や太ももの太い動脈が狭くなったり詰まったりする病気で、動脈硬化が原因でコレステロールのような血液中の脂質が血管の壁にたまることによって起ります(図1)。症状は冷えやしびれから始まり、悪化すると数十〜百m歩くと血液が不足して足が痛くなり歩けなくなる間歇性跛行が起きてきます。次第に黙っていても痛くなり(安静時痛)、放置すると足が腐ってくることもあります(潰瘍・壊疽)。
図1. |
足と手の血圧を同時に測ることで簡便に血管の詰まり具合を推定できる器具が普及しており、診断がつけやすくなっています(図2)。さらに、動脈の閉塞・狭窄している部位、範囲、石灰化の程度を明らかにするために、超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影などを行います。
図2. |
間歇性跛行の場合、運動療法(歩くことの繰り返し)や抗血小板薬による薬物療法などで下肢虚血症状が軽快しないときに血行再建術が行われることがあります。重症虚血肢(安静時痛、潰瘍や壊疽)の場合、可能な限り血行再建術が行われます。血行再建術は狭窄あるいは閉塞した動脈の先に血液を送ることを目的としています。組織に流れる血液の量を増やすことで、間歇性跛行や安静時の痛みが軽くなり、潰瘍など治癒することを期待しています。ただ、既に壊死して回復不能な部分は切断する必要があります。
血行再建術としてカテーテル治療(経皮的血管形成術:PTA)やバイパス術、血栓内膜摘除術があります。PTAとはカテーテル(細い管)を使用して病変部位を広げる方法で(図3、4)、バイパス術は自家静脈や人工血管を使用して病変部位を超えて血液の流れ道を作成する方法です(図5)。血栓内膜摘除術は動脈を切開して病変を取り除く治療法です。最近は身体に負担の少ないPTAによって治療可能な場合がほとんどですが、病変部位や全身状態を考慮して患者様に最適の治療法を選択します。
図3. PTAは血管造影室で行われます。皮膚から動脈を穿刺して、動脈の狭い部分や詰まった部分をカテーテルの先についたバルーン(風船)やステント(金属の筒)を使用して広げる治療法です。局所麻酔で行い、入院期間も数日間で済みます。 |
図4. PTA:詰まった骨盤の動脈がステントで広がっているのが分かります。 |
図5. |
下肢閉塞性動脈硬化症は足が腐ることも問題ですが、それより重要なのは足が動脈硬化なら全身が動脈硬化になっている可能性が大きく、脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険性が高いことです。下肢閉塞性動脈硬化症の症状を全身野動脈硬化のシグナルととらえて、食生活を改善したり薬を使用したりすれば、脳梗塞や心筋梗塞の発症を予防することができます。
RF治療は、正式には血管内高周波波焼灼術と言います。血管を引き抜かず(ストリッピング手術と言います)、血管の中に細いRFカテーテルを通して、の熱によって静脈を焼いて塞いでしまう方法です(図1)。従来のストリッピング手術は足の付け根と膝の内側の2か所を切開していたのですが、RF治療は膝の内側に細い針を刺すだけで治療することが可能です。また、血管を引き抜かないので、周囲の組織に傷害を与えることが少なく、そのため治療後の痛みや出血が少なくなります。また、手術時間がレーザー治療に比べて短時間で済むこと、術後疼痛が少ないことが報告されています。
図1. ラジオ波治療機器 |
RF治療は2014年6月に保険収載されることが決まり、保険診療が可能になりました。これまでの自由診療では初診料、超音波検査、術前検査や術後検査がすべて自己負担でしたが、今後は全て保険診療で行うことができるようになりました。
RF装置の販売許可の付帯事項として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構から本治療法に十分知識を得た医療者に販売することが販売業者に義務付けられています。当院は血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会により実施施設の認定を受けており、西部俊哉、岩橋徹、戸口佳代医師が実施医の資格を持っております。
当院でも7月よりRF治療を開始しました。下肢静脈瘤が気になる方は当院外来にご相談ください。