東京医科大学

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医局カンファランス

パニックカード ver.5 喉頭痙攣

報告者:石崎

カテゴリ : 関連病院

今日は小児麻酔が2件。

麻酔導入時や抜管時にラインを抜かれた状態で、喉頭痙攣や徐脈が生じたときの危険性や、
そうならないようにする為の注意点を、後期研修1年目のN先生と話し合っていました。

「もし、本当にラインがない状況でそうなったら、どうするんですか?」

「舌に注射するんだよ。
 それまでは、マスクでCPAPをかけて、セボ麻酔を徐々に深めるしかないね。
 耳たぶの後ろのツボを押すといいらしいけど、やった事ないな。
 昔は、最期の最期に声門が開くから、そのチャンスを逃さずに換気しろって言われて、
 実際、それで乗り切ったこともあるよ。
 舌の投与量は、えーと・・・
 とにかく、そうならないようにラインを死守するのが大事だぞ。
 シーネと包帯で固定して、ラインが入っている腕を誰が守るのかを指名しておくんだ。」

DASの抜管ガイドラインに載っていた投与量ですが、記憶があやふやで正確に説明できません。
これは、いかん。
というわけで、久々のパニックカード、バージョンアップ !!

カードは新しいエビデンスとしてDASガイドライン2012に準じて作成しました。
投与量については、ASAのリフレッシャーコース2009テキストも参考にし、
Larson's maneuver の元ネタも載せておきました。

戸田 パニックカードver5.007.jpgのサムネール画像













実際の喉頭痙攣なら、パニックカードを見る余裕もないのでしょうが、
普段から麻酔器にぶら下げておけば、何気なく見て記憶に残るかな・・・
ラインが無い状況で何ができるのか、覚えておきましょう。

興味深いのは、DAS 抜管ガイドラインでは、軽度・中等度の喉頭痙攣ではプロポフォール投与で、
より強い喉頭痙攣に対してスキサメトニウム投与となっている点です。

喉頭痙攣は患者にとってかなりのストレスで、そのストレスがさらなる状況の悪化を招きます。
通常は吸入麻酔薬で麻酔深度を深めるのは無理でしょうから、プロポフォールの投与は当然と言えば当然です。
実際の状況として、導入時の残りがあるプロポフォールなら直ぐに投与でき、
その後のスキサメトニウムによるFasciculationの不快感も避けられます。
ただ、DASのニュアンスだと、プロポフォールで解消されればそれでオシマイですから、
軽い喉頭痙攣の現象の中には、多分に、息こらえなどの病態も含まれているような気がします。

もうひとつ、関係ないかもしれませんが、
小児麻酔以外で喉頭痙攣を経験するとしたら、今の時代はレミフェンタでしょうから、
「少量ベクロニウム/ロクロニウムが、レミフェンタのによる喉頭痙攣を予防する」
という文献も紹介しておきました。ご参考までに。




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