スタッフブログ

カテゴリ : 学会参加報告

AHA座長を経験して~若手女性医師として~

  前記事のごとく、2015117日~11日までアメリカ、オーランドで開催された第88回アメリカ心臓協会学術集会(AHA2015)に参加した。

個人の業務ではあるが今回のAHAではSpecial Sessionである"Hypertension and Diabetes Mellitus: The Foundation of Both Heart and Kidney Disease"の座長をつとめさせて頂いた。Orland2007年のAHAで恩師のご指導もあり初めてOral presentationをさせて頂いた地であり、同じ場所で開催されたAHAで国際学会で初めての座長を務めさせて頂いたのは感慨深いものであった。Special SessionであったこともありPresenterにはそうそうたる先生方が名を連ねられたが、特に前記事のACOORD試験の責任者であるDr. William Cushmanと直接ディスカッションさせて頂けたのは有意義であった。

本来AHAのような世界規模の学会のSpecial Sessionの座長をまだ実力・経験ともに不十分な私のような若手医師/研究者がつとめるのは稀なことだと思われ、座長の招聘状が届いたときには何かの間違いではないかと疑った。誰が推薦してくださったのかと国内外の恩師にたずねたが誰も推薦していないとのことであり(それはそれで寂しくもあるが。。。)、何故自分が座長に選ばれたのか分からないままAHAに参加したが、実際にいくつかのSessionをまわり私なりに謎がとけた気がする。というのも、私が座長をしたSession以外にも若手の女性の医師・研究者(更には人種的minority)が座長をされていたSessionがいくつか見受けられ、いわゆる"ポジティブ・アクション"による登用を想像させられたからである(ただしあくまでも個人の想像の範囲内である)。

日本においても昨今は特にAcademiaにおける男女不均衡が指摘され、男女共同参画の一環として男女格差の解消を目指し、働く意欲と能力のある女性の活用をはかる為に女性を積極的に登用するポジティブ・アクションが実施されはじめている。ポジティブ・アクションについては逆差別の側面も含め賛否両論があり、これに対する個人的見解をここで述べるつもりはないが、少なくとも日本で一番大きな循環器学系の学会である日本循環器学会の学術総会などでは若手女性が座長をしているのは私自身は見たことがない光景であり、多少なりの驚きを覚えたのは事実である。

実際の座長中には事もあろうに突然非常ベルが会場中にフラッシュライトとともにけたたましく鳴り渡り、セッションの途中で全員が一時屋外に避難しなくてはいけないというハプニングにみまわれ、ともに座長をしていたMassachusetts General HospitalMGH)のEndocrinologistで私と同じく若手minority女性医師で今回AHAで初座長であったDr. Lewisと果敢に(!?)に対応したが、この非常ベル騒動で中断され再開できなかったセッションも他にあった中で、非常ベル解除後に担当セッションを無事に再開し終えられたのには二人とも安堵した。さらに、そんなハプニングを共有したからこそ、Session終了後に名だたるPresenterの先生方と改めて交流ができたのは貴重な経験となった。

また今回のAHAではEpidemiology & Prevention Councilから同学会のFellow(FAHA)に選任して頂いた。FAHAへのApplicationではAHAに対するこれまでのContributionを問われるなど少々タフな内容もあったが、International Fellowとして選任頂いたことで、日本からの疫学研究を今後も発信し、世界的な循環器疾患予防につとめることへの責務を改めて自覚した。

今回AHAから座長の機会やFAHAを頂いた事には同学会および恩師の先生方にただ感謝の念を抱くばかりだが、これを"思いにもよらぬ巡り合わせ"と個人の運や経験値として終わらせず、与えられた恩恵をいかに活用し還元していくかがこれから最も重要なことであり、その責任を改めて考えさせられた今回のAHA参加であった。

 

カテゴリ : 学会参加報告

大規模臨床試験SPRINTからの報告

 2015117日~11日までアメリカ、オーランドで開催された第88回アメリカ心臓協会学術集会(AHA2015)に参加した。

本学会では今後の高血圧治療ガイドラインに大きな影響を与える可能性がある大規模臨床試験SPRINTの発表があり、学会期間中に米国高血圧学会ガイドライン委員やSPRINTの先駆けとなった後述のACCORD試験のdirectorから直接その知見をえたのでこれを報告する。

SPRINTでは心血管疾患リスクの高い非糖尿病患者において、厳格降圧療法群(目標収縮期血圧<120mmHgN=4678例)と従来の標準降圧療法(目標収縮期血圧<140mmHgN=4683例)における心血管イベント抑制における有用性をPROBE法(prospective, randomized, open, blinded endpoints)にて検証した。試験開始当初は、予定追跡期間は平均5年の予定であったが、厳格降圧群にて一次エンドポイント(心血管死、全死亡、心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全の複合エンドポイント)の有意な低下が示され、20158月に早期修了した(追跡期間中央値;3.26年)。厳格降圧群では収縮期血圧は139.7mmHg121.5mmHgに低下、標準降圧群では139.7mmHg134.6mmHgに低下し(ベースライン→試験修了時)、厳格降圧群では標準降圧群にくらべ有意に複合一次エンドポイントリスクが低く(243[1.65/] VS 319[2.19/]、ハザード比0.7595CI0.64-0.89))、特に心不全、心血管死、全死亡において有意な抑制が認められた。また性別、人種、CKD、年齢(75歳以上)などのサブグループ解析でも複合一次エンドポイントについては同様の結果であった。なお、有害事象については厳格降圧群にて低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害が多かったが、障害を伴う転倒や徐脈においては両群に有意差はなく、また起立性低血圧については標準降圧群の方が多かった。

 (コメント)

本研究結果をうけ、今後高血圧治療のガイドラインの降圧目標が変更される可能性もあるが、本研究対象は心血管疾患ハイリスク患者であることや、厳格降圧群では重大有害事象となりうる急性腎障害や電解質異常も多いことから実臨床への応用には慎重な配慮を要する必要性が考えられた。

また以前、糖尿病患者における厳格降圧療法の心血管疾患抑制における有用性を実証できなかったACCORD試験については、本試験の問題点として研究のパワー不足(発症イベント数が予想イベント数の約半数であった為など)が以前から指摘されていたが、同試験にて報告された厳格降圧による心血管疾患抑制のハザード比の95%信頼区間[0.8895CI0.73-1.06)]はSPRINTのそれ[0.7595CI0.64-0.89)]とオーバーラップしており、この結果からもACCORDの結果をもって、糖尿病患者における厳格降圧療法の有用性を否定するのは困難なことも改めて認識され、更なる検証が必要と考えられた。

 

声の主 : 冨山博史

冨山博史

カテゴリ : 学会参加報告

"Scientifically, we enjoyed a lot in Milan. Thank you!!"
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カテゴリ : 学会参加報告

欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)100年以上の建築工事により、漸く完全な外観を見せるようになったサクラダ・ファミリエをシンボルとするバルセロナで開催された。ESCは年々規模が拡大して、参加者も多くなる一方であり、会場への電車の出発するEspanya広場から混雑していた。

今回の学会では稀な血管疾患に関するセミナーにおいて、山科教授が高安病に関する教育的な自験例の画像や、日本から発信されているガイドラインを中心に講演された。また、教室からも5演題の発表があったが肥田講師は"Diagnostic accuracy of the cadmium-zinc-telluride SPECT system using low-dose protocol with a short-scan time"という新しいγカメラでの診断方法についての研究を報告した。

学会の頂点であるHot Line Sessionでは、初日に発表された心不全治療に関するPARADIGM-HF試験が今回のハイライトである。この臨床試験では心不全に関連する様々なペプチドを分解するneprilysinの抑制薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬を合わせたLCZ696という薬物を、心不全治療の標準薬であるrenivaceと直接比較して予後を評価している。平均左室駆出率29.8%の症例8442例を27か月経過観察した所、心臓死を20%低下させた。エビデンスの確立している治療薬に取って代わるだけのポジティブな結果を示す大規模臨床試験は数年来なかったので、センセーショナルに受け止められた。発表の後にESCNew England Journal of Medicineが企画して行われたMeet the Trialistsも立ち見の人だかりになる程であった。心不全の予後改善率はβ遮断薬が35%であるのに対してACEI15%であったが、今回の試験結果からはLCZ696はβ遮断薬と同等の効果が期待される。今後は薬価の設定と血圧低下作用への対応が日常臨床に受け入れられる際に重要となろう。これに対して、狭心症に対するivabradineによる心拍低下作用の有効性を確認する目的で実施されたSIGNIFY試験については、6年前に同じ薬で行われたBEAUTIFLE試験のサブ解析とは異なり、狭心症の症状が強い症例の予後を悪化させる可能性が示された。以前の試験はネガティブ試験であったにも拘らず、このサブ解析での薬物有効性を強調していたことは問題であるが、またもメーカー主導の大規模臨床試験ではよくある事象の繰り返しである。今回についてはivabradineの適応が削除される可能性もあるという。また、急性心筋梗塞の多枝疾患に対する治療戦略を検討するCvLPRIT試験では、296例に対してPCIによる完全血行再建(primary PCI 59%, staged PCI 27%)とculprit lesionのみへのPCIを比較した。1年後の総死亡・再心筋梗塞・心不全・再血行再建から成る複合エンドポイントでは完全血行再建群が10%で21%の対照群に対して優れており、昨年のESCで報告されたPRAMI試験と類似の結果であった。しかしこれもPRAMI試験と同様に、対象症例が少なく、且つ、culprit lesion治療群における他の有意狭窄病変に対する治療判断がどのようになされているか、具体的な病変形態も含めた解明が必要である。いずれにしても、多枝病変の急性心筋梗塞に対する治療戦略に関しては、現在進行している大規模試験であるCOMPLETE試験の結果を待つ必要があるのではないだろうか。

最近は世界的にも産業育成のために、産学合同という掛け声が強くなる一方で、研究機関と企業との関係に関する厳しい規制もある。特に米国では規制が強いために、AHAACCといった心臓関係の主要学会の参加者は近年低下傾向にある。これに対してヨーロッパでは多数の国が関係しているために、統一された厳しい規制は適応されることが少ない。この点において欧州からの情報発信については、企業の影響が未だに強いことも明記する必要があると思う。

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カテゴリ : 学会参加報告

 臨床医、特に大学病院での研鑽を選んだものの宿命として学術集会での演題発表があります。このブログをお読みのみなさまも、うれしはずかしの記憶や、ほろ苦い記憶など様々なご記憶があるのではないでしょうか。東京医科大学循環器内科からも先日、東京ステーションカンファレンスにて2014823日土曜日に高山守正先生ご会頭の『新しいチーム・コンセプトと心血管治療』をメインテーマとする第23回日本集中治療医学会関東甲信越地方会で3名の若い先生方がデビュー戦を飾りましたので、臨場感あふれる写真と、発表終了後の晴れやかな表情とともにご報告をいたします。

 

当日は天候にも恵まれ、東京駅からアクセス抜群の会場は多くの聴講であふれていました。われわれ東京医科大学勢はいずれも午後から2演題の口演と、1演題のポスター発表の機会をいただきました。トップバッターは左室自由壁破裂症例の教訓から大学病院における多科連携の重要性をまとめた後期研修医の佐々木雄一先生が堂々とした発表を行い、参加聴講へ問題提起を行いました。その後、前期研修医の田谷侑司先生が劇症型心筋症症例で体外式人工心臓を用いて他院とのチーム連携により救命した症例を発表しました。今回の学術集会のテーマが新しいチーム・コンセプトでしたので議論も大いに盛り上がりました。その後はポスター会場に場所を移し、同じく後期研修医の相原由佳先生による喘息症例の頻脈患者にランジオロールを使用した2症例の経験を報告し、多くの聴講から質問を受けていました。

 

自分自身もよくデビュー戦のことを覚えています。発表そのものもそうですが、発表に至るまでのスライド作りや深夜まで指導医とカルテを読み返したり、必要な画像をまとめたりと・・。今回発表した3名も研修医として日常臨床に奮闘しながら、夜誰もいなくなった医局で慣れないパソコン操作やスライド作りに苦労していました。その後研修医達は、発表後に山科教授からねぎらいの言葉を頂いた後に、『この発表を年内に症例報告として形にするように』と、東京医科大学循環器内科伝統の『仕事の報酬は仕事』の洗礼を受けました。()

 

今回のメンバーはもちろんここでへこたれるメンバーではありません。山科教授から訓示の後に、乾いた喉を潤すための軍資金をたっぷりといただき、学術集会終了後の傾いた夏の太陽の下、終わり行く夏を肌で感じながら冷たいビールを頂きました。この発表後の1杯も本当においしいですよね。

 

最後に、この貴重な経験を生かして、未来の東京医科大学循環器内科の研修医とともに学術活動にも励んでくださいね。『この道はいつか来た道』最後にこの場をお借りしまして、発表へお力添えを頂きました諸先生方へ感謝を申し上げます。ありがとうございました。

文責 渡邉雅貴/山下淳

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